2011年3月21日月曜日

クリストファー・チャブリス/ダニエル・シモンズ「錯覚の科学」

錯覚の科学
 邦題よりも原題の方がいいんじゃないか。
 そう思うのは偶然、テレビで「見えないゴリラ」の実験のビデオを見たからかもしれない。その実験がどんなものか、どうかはこの本を参照して欲しいが、たぶんそのような話を聞いてもにわかに信じられないだろう……。自分でその経験をしないかぎり。
 経験してみて軽くショックを受けた。
 まさか****の試合中に****通りすぎる****気づかないなんて。
 考えてみれば、テーブルマジックというのはまさにそれを応用した技術なのだろう……。
 本の中ではいろいろな錯覚について語られているが――「注意の錯覚」「記憶の錯覚」「自信の錯覚」「知識の錯覚」「原因の錯覚」「可能性の錯覚」――、その中で一番、ショックを受けたのは「記憶の錯覚」かもしれない。ふいに自分の記憶があいまいに感じられて気味が悪くなってしまった。確信を持っている記憶ほど、あてにならない、というやつ。
 まさに思い当たることがあったからだ。
 時々、本の一部を思い出し、それを確認するためにページを繰ることがあるのだけれど、これがいつも本当に見つけるのに苦労してしまうのだ。たしか、ページのこのあたりに書かれていてあった――見開きの位置とか、このイラストのすこしあととか、はっきり覚えているにもかかわらず、その場所には見つからない、という経験を何度もしていて。
 いやはや、錯覚にすぎなかったのか。その確信は。