2011年3月11日金曜日

Evernote vs Emacs+howm+org+Dropbox

 Evernoteはすばらしい。
 よくできたシステムだと思う。
 ありとあらゆる情報を放りこみ、クラウド経由でパソコン、スマートフォンでその情報を共有できる――すばらしい。検索機能も充実していてまさに夢のようなソフトウェアだ。Evernote以前は複数台のパソコンでの情報の同期とその散逸に頭をいつも悩ませていた。
 とにかくひとつのフォルダ配下にファイルに放りこんで複数台のパソコン間はsyncコマンドで同期する――というようなことをやっていた。当時はスマートフォンもなかったのでそれで充分に思えたのだが。問題はひとつのフォルダの下にどんどんファイルを入れていくと情報を探し出すことが困難になっていくことだ。ファイル名にいくら情報を付与してもそれは焼け石に水。
 もちろんその解決策としては検索機能の充実なのだが、それは昔からあるgrepコマンドを使用していた。テキストファイルしか検索できないとか、文字コード系の混在に弱いとか、いろいろ問題はあれど、これはこれでなかなか強力な手段だった(Googleデスクトップという選択肢もあったが、Emacsからシームレスに作業できなかった)。

 そうして辿りついたのがEmacs+howm+org+Dropboxという選択肢だった。
 howmにファイルの管理と検索機能をまかせ、個別のファイルの情報の整理、統合――アウトライン、タグ、リンク(howmのリンク機能およびメニュー機能は使用していない)、todoなどはorg、Dropboxはsyncのかわりで複数のパソコン間でファイルの同期を行なってくれている。
 スマートフォン上での入力、参照、検索機能をのぞけば、Evernoteの機能と同等のことをやっていたわけだ。テキストファイルに関してだけだが。
 単体のEvernoteにはorgのagenda機能はないのでその分、高機能ともいえるかもしれない。
 ちなみにhowmはgrepを使用することができるけれど、ぼくはhowmの検索を使用している。elispで書かれているため、速度的にはgrepに劣るが、文字コード系の混在――ファイルごとに文字コードがちがう、という状況――に対応できるからだ。

 実はそれらのシステムをEvernoteに移行してしまうことも考えた。
 Evernoteの(ぼくにとっての)最大の魅力はiPhone上で入力できる、ということと、写真、音声、pdf、htmlファイルをあつかえるということだ。
 もちろん、htmlに関してはEmacsでもw3mとかを導入すれば、可能だということもわかっているのだが――ブラウザからの直接の取り込みができないということもあって、いまいち乗り気になれなかった。Evernoteはそれができる。Evernote以前はFirefox+ScrapBook+Dropboxを使っていたが、やはり写真(htmlの中の画像ではなく)などが使用できるEvernoteの魅力には抗し難い。
 しかし、今のところ、Emacs+howm側はまだ、Evernoteへ移行していない。

 なぜか。

 せんじつめていえば、個人的理由になる。
 テキストに関してはEmacsに束縛されてしまった。そういう身体になってしまった、というのが一番、大きい。キーバインドがEmacs以外ではとてもストレスを感じてしまうのだ。SKKでのかな漢字変換になれてしまうと、もうあとにはもどれない。これはたぶん、もう不治の病なのだろう……。

 しかし、あえて理由を探せば、Evernoteはテキスト入力が貧弱だということもあるかもしれない。
 テキストの表現としてはhtmlに準ずる形になっているのでEmacs(というか、org)よりも上かもしれないが、アウトライン機能がないのはけっこう致命的だ。Evernoteはノート上ではなく、ノートの集合でアウトラインを実現しているようなものなのだが――しかし、入力しながら考えをまとめる、という作業には適していない。それともそれもしょせん、慣れなんだろうか。
 ただ、これは別にEvernoteで実装すべき機能ではなく、todo管理などと同じように周辺ソフトで行なえば、いいことなのかもしれない。

 というわけでしばらくはテキストはEmacs側、それ以外はEvernoteという選択になりそうだ。Evernote for iPhoneで入力されたテキストはEvernoteのエクスポートファイルから一気にhowmに取りこむelispプログラムも書いてあることだし。

 余談。
 Evernote for Windowsにはインポートフォルダの指定がある。これをhowmフォルダに指定してやれば、Emacsで入力されたデータがEvernoteへ自動的に取り込まれることになるのだが、修正すると、別ノートとしてEvernoteへ取り込まれてしまう。それだとテキストの修正はEvernote上でやらなければ、ならなくなってしまう。修正した内容はインポートフォルダへ同期されないようだし。まぁ、インポートフォルダなんだから当然といえば、当然だけど。