自分に起きた出来事――自伝的記憶を詳細に思い出すことができる超記憶症候群(ハイパーサイメスティック・シンドローム)のジル・プライスという女性の自伝。しかも日付でその記憶を思い出せ、起きたことの日付を正確に思い出せる、という。これは起きたことの順序を正確に思い出せるということで、たとえば、阪神大震災と地下鉄サリン事件、どちらが先に起きたか、ということが一瞬、わからなくなるぼくみたいな人間には驚異だ。
たぶんライティングした人間がとても上手で、幼ないころから居場所を見つけられなかった主人公が自分を知り、居場所を見つけるというストーリーにうまく構成されていて興味深くおもしろく読める。だけれど、ひとつ、知りたいことが描かれていなくて欲求不満だ。
――超記憶を持つジル・プライスはどんな夢を見るのだろう?
描かれてないから知りたいと思っているのかもしれないが。