ダニエル・E・リーバーマン「人体600万年史」(上)
ダニエル・E・リーバーマン「人体600万年史」(下)
非常におもしろかった。ほとんど一気読み。
この本を読んで人類はいったん海にもどったサルという説についてついて疑問符を抱いてしまった。本書ではそのことを簡単に否定しているだけなのだけど、ふと思ったのだ。根拠のひとつである人間は「裸のサル」である、というのは海にもどったからではなく、単純に人間が長距離を移動する種だからかもしれない、と(汗腺の発達と体毛の柔毛化)1。
走るために進化した。
狩猟者はある一頭の大型哺乳類(できれば一番大きいもの)に狙いをつけて、暑い日中に追いかける。追走劇の最初のうちは、獲物がギャロップデ逃げ切って日陰に身を隠し、そこで浅速呼吸をして体温を下げる。しかし狩猟者は、すぐにその跡をたどって獲物に迫る。このときは徒歩でもかまわない。狙った獲物を見つけたら、今度はふたたび走って追いかける。ぎょっとした獲物は、まだ完全に体温を下げられてもいないうちから、またもやギャロップで逃げ出さなくてはならない。こうした追跡と追走を――歩行と走行を組み合わせて――何度も繰り返していけば、最終的に、獲物は体温を致命的なレベルにまで上昇させて、熱射病を起こして倒れる。ここまでくれば、あとは洗練された武器がなくとも安全に、簡単に、獲物をしとめることができる。
著者が「持久狩猟」と呼ぶこの方法——クリストファー・マクドゥーガル「BORN TO RUN 走るために生まれた~ウルトラランナーVS人類最強の”走る民族”」で読んだなぁ、そういえば、「BORN TO RUN」では論文で読んで実際にそれを試していたけれど、この著者の論文だったのかもしれない。などと思いつつ、読み進めていったら下巻で「BORN TO RUN」について言及していた。
Footnotes:
鯨と人間がビタミンCを体内で合成できないのはただの偶然かもしれないし(ビタミンCを合成できなくても生存できる環境にいた、というだけかもしれない)。