2021年8月4日水曜日

上野千鶴子「在宅ひとり死のススメ」

 看取りの医者に訊いたことがあります。臨終のときに、誰が周りにいるか、わかるものですか? と。「いやあ、そんあことわかりませんよ。死ぬ時には脳内麻薬といわれるエンドルフィンが出て多幸状態になりますから、傍に誰がいたって関係ありません」

 ——どうやって調べたんだよっ、と思わず、突っこんでしまったけれど。
 最近、 猫を看取ったとき、焦点の合わない目で浅い呼吸をくりかえし、時々、うぐっとえずいたりしていたけれど、苦しんでいるようには見えなかった。あれはエンドルフィンで天国が見えていたのかもしれない。