マイ・フェイバリットなマンガというものがあってたとえば、 永井豪の「デビルマン」とか、諸星大二郎の全作品とか——そんな中に真崎・守「はみだし野郎の伝説」がある。高校生のときに読んだのだが、文庫版だった 1。
何度目かの引っ越しのときに紛失してしまい——今だにどうしてなくしたのか、わからない——、時折、思い出したように古本屋で探していたのだが、見つけることはできなかった。文庫版ではなくてもブロンズ社が出していた真崎・守選集でもかまわなかったのだが、発見できず。ちなみに「共犯幻想」は選集の方で2、3をもっていたのに、実家に置いていたら親に処分されてしまった。恨み骨髄である 2。
Kindle版もなく——「ホモ・ウォラント」はkindle化されていたので即座に購入した——、たまたま、Amazonで中古が売っているのを見つけた。もちろん購入である。
ヒッピー、ベトナム、核、学生運動、四畳半のアパート、集団就職、上京、同棲、工場の煤煙、睡眠薬……。
再読して時代性——68年から72年ぐらいの——というものを痛感した。
道具立て的なものもあるけれど、ある種の鬱屈した感じが時代性を感じさせるというか——SF、ファンタジーで復活前の河野典生を思わせる——「狂熱のデュエット」「陽光の下、若者は死ぬ」とか、あと「群青」とかもそうだ——というか、そもそも「俺の愛した殺意というペット」なんてサブタイトル、「殺意という名の家畜」のもじりだもんな。
「はみだし野郎の伝説」を読んだのは1976年のことなので、たぶんあの時代の雰囲気をいうのがまだ、色濃く残されていたのだろう。たぶんその何年か後なのだけれど、タモリの「今夜は最高!」というテレビ番組で、集団就職を揶揄したコントを見た。「都会さ、怖いだぁ」——みたいなやつなのだが、どこか、ピンとこなかった。すでにそういうもののリアリティがうしなわれつつあったのだ、と思う。
当時の真崎・守は大量のマンガを描いていたと思うのだけれど、ほとんど本になっていないような気がする。たとえば、「はみだし野郎の伝説」の主役三人がでてくる室町時代(?)を舞台にした短編——耳なし芳一をベースにした作品とか、「 港のヨーコ、横浜ヨコスカ」を狂言回しにした作品とか、オイルにとりつく黴が蔓延したために現代文明が停止してしまった話とか、エジソンの伝記とか——当時、読んだ記憶がある。まだ、小中学生だったから、大人ものをいれれば、もっと作品はあったはずなのだ。
ただ、読んでみたいような読みたくないような……。