はじめて読んだのは「あの真珠色の朝を…」だった。
1976年6月7日——もう30年以上も前のことだ。
いわゆる日常の中に起きる不思議な出来事、という奇妙な味系列なのだけれど——とくに表題作のラストが強く印象に残っている——、「自殺卵」の作品群もその系列なのだろう。
けれど。
おかしなことに不思議な出来事よりも、日常の方に強く心魅かれてぼくにはめずらしく、二日で読み終えてしまった。老い、幸せでも不幸せでもなく、ただぼんやりと日々がすぎていく……。そんな日常。
奇妙な味ともまたちがう不思議な一群だった。