ベンスン殺人事件 (S・S・ヴァン・ダイン全集1) (創元推理文庫)
再読である。
中学のとき以来の——もう40年も前のことだ。いつか再読したいとは思っていたのだが、実家に置いてあった本は処分されてしまった。もうほとんど忘れられてしまった作家になっていたこともあって読めることはないかもしれないなぁ、と半分はあきらめていた。全然、おもしろくなかったらどうしようとも。
何しろ、中身は何も覚えていない。ただ、ひたすらはまったことだけしか。
新訳がでたのは幸いだった。
むっちゃ、おもしれーっ。
読み終えてしまうのがもったいない、と何度、思ったことか。
ジョン・ラフリー「別名S・S・ヴァン・ダイン: ファイロ・ヴァンスを創造した男」を読んでいたこともあってファイロ・ヴァンスは作者自身の影がきわめて濃くでているのだなぁ、とは思ったが、そんなこととは関係なく、ファイロ・ヴァンスに痺れてしまった。ああ、そうだよ。40年前の自分もそうだったんだよなぁ。
当時のぼくはエラリー・クイーンよりもヴァン・ダインの方が全然、おもしろい、と思っていたけれど、それは今もかわらない、ということがはっきり、わかった。ヴァン・ダインの方が好みだった。嗜好がほとんどかわっていない、という事実には苦笑するしかないのだが。
こりゃあ、最低、「カナリア殺人事件」「グリーン家殺人事件」「僧正殺人事件」を再読するまでは死ねんなぁ。