読み始めたときは高等研究所の土地の歴史が細々と書かれていて、何でこんなことを詳しく書いているんだよー、と苛々してしまった。もう途中で投げ出そうか、と。ところが読み進めていくうちに、登場人物の生まれから詳しく書く、その記述の背後から何かが立ち上がってきた。
それが著者のスタイルなのだろう。
不思議なことにそうすると、読むのをやめることはできなくなり、ジョン・フォン・ノイマンの最後など涙ぐんでしまった。
題材としては偶然、ジェイムズ・グリック「インフォメーション: 情報技術の人類史」と同じものだったのだが、ずいぶん、印象がちがう。フォーカスしている人物がちがうということもあるだろうが。かたや、バベッジやシャノン、こちらはフォン・ノイマン。とくにフォン・ノイマン夫人――世界初のプログラマーがとても印象深かった。