2012年1月12日木曜日
山田風太郎「人間臨終図巻」
いつか読みたいと思っていた一冊――といってもぶ厚い本で、今回はなんと文庫本で四分冊。一冊一冊もかなり厚い。読み終えるのにけっこうな日数がかかってしまって気づくと、年を越えていた。
最初のきっかけは四巻の解説を書いている筒井康隆が「奇想天外」という雑誌で連載していた書評で(タイトル失念)取り上げていて大絶賛していたことだった。元々、山田風太郎は好きだったし、読んでみたい、と。だれもが大絶賛しているし。
それにしてもこの年齢で読むと、けっこう来るものがある。ちょっと体調を崩すと、これってもしかしたら、とか思ってしまって。アホな話だけど。
この本を読むと、自分がどんなに恵まれた時代に生きているのか、と痛感する。すこし前までは人は簡単に結核や梅毒で死んでいるし、ちょっとしたことでも死んでいる。戦争もあったし、極貧というのもある。すくなくとも今の時代、細菌性の病気で死ぬのはまれになっているだろうし、事実、老年になれば、なるほど、戦後の人間が増えてきて――その死因は癌、心臓発作、脳溢血というのがポピュラーになる。
不思議なのことだけど――この本では死亡年齢順に並べられていることもあって――やはり年齢によって死亡原因に偏りが感じられる。様々な時代の偉人、有名人を取り上げているからきっと統計的な有意性はないのだろうけど、中年あたりで多いのは癌のようだ。若死には結核。老年は心臓発作、脳溢血。
よくテレビなんかで取り上げられる偉人でも今際のときなんてけっこう悲惨だったりして驚く。ジャクリーン・ケネディなんてオナシスの死後のその遺産をすべて相続したのだとばかり思っていた。たとえば、坂本九がどうして亡くなったか、覚えておいでだろうか。ぼくはすっかり忘れていた。
――凄い一冊、いや四冊だった。