2020年7月31日金曜日

アルフレッド・W・クロスビー「史上最悪のインフルエンザ——忘れられたパンデミック」

 そういえば、 スペインかぜについて何も知らない。
 wikipediaを読んではじめて第一次世界大戦の末期に起きたパンデミックだと知ったくらいだし、そもそも、風邪だと思っていた。インフルエンザだったんだ……。
 生まれる前のことなので記憶がないのは当然なのだけれど、たとえば、第一次世界大戦についてのイメージはそれなりある。西部戦線、塹壕戦、ガス兵器、戦車……。なのにその背景で起きていたパンデミックについては——起きていたということすら認識がなかった。
 なぜだろう。
 奇妙といえば、奇妙で、そのことについては「史上最悪のインフルエンザ——忘れられたパンデミック」の中でも最終章「人の記憶というもの——その奇妙さについて」で触れられている。
 結局、歴史というのは物語によって形作られる、ということなのだろう。
 偽史だ。
 第一次世界大戦は多くのフィクションで題材にされているが、スパニッシュ・インフルエンザは聞いたことすらない。吉川英治が取り上げるまで宮本武蔵のことはほとんど知られてなかったのという逸話を思い出す。