2017年3月13日月曜日

ローレンス・クラウス「宇宙が始まる前には何があったのか」

 ローレンス・クラウス「宇宙が始まる前には何があったのか」

 ——宇宙の果てにはどうなっているのか。

 子どものころ、学研の「科学と学習」だったか、「少年マガジン」でそんなQAを読んだ。答えはまっすぐ進んでいるつもりでも空間が曲がっているため、やがて元の場所にもどってくる。つまり宇宙は閉じている。
 そのころに観たテレビドラマの最終回で、主人公が宇宙を漂流してしまい、宇宙の果てを超えて花畑の元の世界にもどってくる、というのがあった。もしかしたら元の世界ではなく、平行宇宙だったのかもしれないけれど。非常に印象に残っている。1

 現在の科学の知見では宇宙は開いているわけでも閉じているわけでもなく、平坦らしい。実はこの本の後半、読み進めるのがわりとつらかっただけど、それは「無」から何かが生じるのが、どうしても納得できなかったからだ。作者が神学者や哲学者から反論されているように、それはもう「無」じゃないんじゃね? とどうしても思えてならなかった。
 それがふと腑に落ちた。
 別に作者がそれを説明した部分でもなかったのだが——。

 この本の中で何度もでてくる対消滅の話だ。
 物質は反物質と出会うと対消滅する——このこと自体は納得がいくし(理解しているわけではないが)、なんとなくわかる。腑に落ちる。それなのに、なぜ、無から物質と反物質が生じることを納得できないのか。
 物質と反物質が出会って「無」になるのなら「無」から物質と反物質が生じてもおかしくないではないか——と、ふと気づいたのだ。この本の中で何度もくりかえしてでてくるように。

 もう一点、衝撃を受けたのは多宇宙(マルチバース)についてだった。
 NHKのドキュメンタリーなどでマルチバースについて語られるのを観ていてなんとなく、マルチバースというのは可能性としての宇宙のことなのだ、と理解していたのだが、どうやらそうではなく、現実にそこに存在しているという話らしい。見ることも触れることもできないが。たしかにそうでなければ、おかしいのだけれど——人間に都合のいい宇宙があることの理由として。

Footnotes:

1

どうやら「キャプテンウルトラ」の最終回らしい。