2012年11月7日水曜日

エラリー・クイーン「フランス白粉の謎」


エラリー・クイーン「フランス白粉の謎」

 「ローマ帽子の謎」につづいてあまりのおもしろさにひっくり返ってしまった。再読なのに――どこのどいつだ。ミステリは再読できないなどとしたり顔でいったやつは。まぁ、内容を忘れていたということはあるかもしれないがそれにしても。
 あまりのおもしろさになかなか、読み進められなかった。もったいなくて数ページ、読んでは「おもしれー」とか「すげー」とかいって本を閉じていた。おそろしいことに最後のクイーン警視のつぶやきは覚えていて――というか、エラリー・クイーンの名前を聞くと自動的に思い出してしまうほど印象に残っていたのだが、「フランス白粉の謎」だったとは。しかも今回、読んだ新版では旧版とはちがう版をつかっていて最後のクイーン警視の言葉がちがうことすらわかった。旧版には注釈があったのだ。そのことすら思い出した。すっかりエラリー・クイーンのどこかの短編でのシーンだとばかり思っていたのだが。
 それにしても自分がいかに松本清張の「本格ミステリはお化け屋敷」説に毒されていたか、わかって慄然とする。松本清張がエラリー・クイーンをどう評価していたのかは知らないけれど、「ローマ帽子の謎」は劇場、「フランス白粉の謎」はデパート、「オランダ靴の謎」は病院を舞台にしている。この現代的ともいえる設定はまるで「高層の死角」でホテルを、「新幹線殺人事件」で新幹線を舞台にした森村誠一みたいじゃないか。社会派ミステリの雄だった森村誠一に。
 あー、何てことだ。人生、失敗した。