ゲルト・ギーゲレンツァー「リスク・リテラシーが身につく統計的思考法―初歩からベイズ推定まで」
——検査の結果が陽性だった場合、ほんとうに病気である確率はどのくらいか?
けっこう有名なエピソードなのか、ベイズ推定がらみではよく目にする。はじめて出会ったときはしばらく考えて正解にたどりつけたのだが——これは本で出会ったから正解できたのであって現実だったらもっと短絡的に考えて無理だった——、それ以降、何度、やっても正解にたどりつけなくなってしまった。
ずっとどうして最初のときは解けてそれ以降、間違うのだろう、と不思議だったのだが、この本で疑問が氷解した。
ベイズの定理で解こうとしていたからである。
はじめてのときはベイズの定理なんか、知らなかったので頻度で——1000人のうち×人が陽性でと——考えて結局、正解にたどりつけた。
この本では全編、そのことをくりかえし、主張している。
確率でリスクを把握するのは困難である。頻度で考えると、はるかに把握しやすい、と。
それでも一番、考えこまされたのは乳がん検診についての章だった。
三ヶ月ほど前にテレビのニュースバラエティ番組で乳がん検診の啓蒙をやっていてそれをまたまた観ていたということもある。まじめに観ていたわけではなかったのだが、乳がん検診を受けるべきなんだろうな、となんとなく——ぼくは男なのであまり関係はないのだが——、思っていた。しかし、それはまちがいだった、と教えられた。すくなくとも話題にあがっていない隠されたコストが存在すること。そして、非進行性の乳がんというもの——つまり無害の——が存在することをはじめて知った。
すこしばかり考えを変えることにした。