まちがいなく、自信をもって人に勧めることができる映画だ。
とてもおもしろい。
にもかかわらず、途中で何度も見るのをやめようか、と思ったことか。
12人の主要登場人物のだれにも感情移入ができず、肌がざらつくような感じがあったからだ。つまり不愉快だった。もちろん、話はおもしろいのだ。だから思わず、見つづけてしまったのだけれど。
じゃ、それがこの映画の欠点かというと、そうではなく、感情移入できないような「優しい日本人」を配置したのは脚本の三谷幸喜の周到な計算だろう。あの配役は必要なことだった。
この手の映画は最後の三分の一で次々に話がひっくり返っていくのが、快感なのだが、それを期待していたからこそ、最後まで見つづけることができた。そうでなかったらもしかしたら見るのをやめてしまったかもしれない。
何しろぼくはネット配信でこの映画を見ていたのだから。
映画館、あるいは劇場などのどこかの小屋で見ていたのなら多少、不愉快であっても、見つづけるのが辛く感じられても最後まで見るだろう。それは観劇するために、劇場の中に束縛されているからだ。
ところが、ネット配信、あるいはテレビ放映だと、中断する敷居が低くなってしまう。そうやって考えると、次々にアクションが起きて観客の気持ちを引いていくハリウッド風のつくりはある意味、必然なのかもしれない。