ハードのコンタクトレンズを使っているので目に入れる前にこすり洗いというものをする。洗浄液をつけて親指、人差し指、中指のあいだでこすり洗いをするわけである。
で、その日もそうやっていたらふいに指のあいだからコンタクトの感触が消えてしまった。まるで氷砂糖でできていたかのように。
一瞬、溶けたのか、と思った。
そんなわけはない。
手を確認したが、洗浄液が泡立ってしまっていてコンタクトレンズは見つけ切れなかった。水ですこし流してあらためて確認すると、何か、ある——コンタクトレンズの破片だった。
砕けたのだ。
コンタクトを使いはじめて30数年。はじめての経験だった。