2015年4月10日金曜日

島田荘司「アルカトラズ幻想」

 島田荘司「アルカトラズ幻想」(上)
 島田荘司「アルカトラズ幻想」(下)

 まぎれもなく小説だけど、これってほんとうに小説なのか?
 思い返せば返すほど、異様で歪だ。話が、ではない(もちろん話自体もとんでもないのだけど)。小説としての構造が歪だ。こんなんありなのか?
 小説を読んだことがない人間がはじめて書いた小説、というのならまだ納得できる。ところが作者は何十冊もの著作を持つ長老ともいえるベテラン作家だ。それほど、異様で歪だ。
 しかもだ。
 最初から最後までむちゃくちゃおもしろく、最後にはすべてが現実の中に着地してしまう。
 こんな小説が世の中に存在するなんて。
 唖然とするしかない。

2015年4月3日金曜日

原田隆之「入門 犯罪心理学」

 原田隆之「入門 犯罪心理学」

 いやあ、おもしろい。そしてほっとした。いろいろと世の中、かわってきているんだな、と。覚醒剤常習者や性犯罪者にたいしてエビデンスにもとづいた——統計学的に有効な——治療が行なわれつつある、ということなど。

 実は、テレビで自画像を描かせてその人の心理を分析するのを見るたび、これってどのていど、信頼できる話だろう、と思っていたのだけど——ほんとうらしくも見えるけど。右側に描くのは右脳が、とかいったりするのを聞いてほんとうか? と。
 よくよく考えると、世の中にはロールシャッハテストというものがあるじゃないか。無意味なインクの染みを見せて何に見えるか、と答えさせるやつ。ということは自画像を分析する人は自分自身にたいしてロールシャッハテストを行なっていることになりやないか?
 ロールシャッハテストによる性格診断は役立たないということが1970年代以降の研究で実証されている、という一文を読んでふとそう思った(結局、ほんとうらしく見えたのは生存者バイアスだったんだろうなぁ。ほんとうらしく見えないときは番組で放送しないだろうから)。