2012年2月18日土曜日

メラニー・ミッチェル 「ガイドツアー 複雑系の世界: サンタフェ研究所講義ノートから」


 鼻血がでるほど――でてないけど――おもしろかった。
 第17章の「スケーリングの謎」など、あまりのおもしろさに感動すら覚え、第9章の「遺伝的アルゴリズム」は、実際に自分で実装してみようか、と思ったほど。さすがに第13章のコピー・キャットは無理っぽいが。
 それにしてもダグラス・ホフスタッターの「ゲーデル,エッシャー,バッハ―あるいは不思議の環」かぁ。作者のメラニー・ミッチェルはそれを読んで学者に転身したらしいのだが、日本で出た邦訳の出版は1985年。実は手元に初版本がある。人を殴り殺せそうなぶ厚い本が。
 衝撃的な本だった。
 で、「複雑系の世界」の訳本は2011年。
 あれからもう26年も経つのか。両方の本にダグラス・ホフスタッターの写真が掲載されているのだが、なんとまぁ、老けたことよ。元気そうだけど。いやぁ、その時間が自分の上にも流れたことを考えると、なんともいい難い気分になる。

2012年2月7日火曜日

エリック・マコーマック「ミステリウム」


 実は去年読んだ小説の中でベストはエリック・マコーマックの「ミステリウム」だった。たかだが27冊の中からだが。何の予備知識なしに読んだのが、よかったのかもしれない。今まで読んできた小説の中でもけっこうな上位に属する。
 つい先日、軽く読み直し、傑作の感あらた。
 それだけではなく、最初のときには気づかなかった「もしかしたら」という解釈に気づき、愕然とする。そうだ。そうなのかもしれないじゃないか。というか、そうだろう、と。


 それにつづいて「パラダイス・モーテル」を読んだ。
 おもしろい。しかし、個人的には「ミステリウム」の方が数段、好きだ。
 それはたぶん、「ミステリウム」の方がミステリーの構造を持っているからかもしれない。構造があるからこそ、それが崩れたときの衝撃が大きい。「パラダイス・モーテル」はどちらかというと最初から構造を崩している。構造が組み上がらないうちに崩して回っているような感じとでもいえば、いいか。
 そのせいもあってか、最後がどうしても予定調和的に感じられてしまった。別にそれが悪いというわけではないのだけれど。