大学生だったのはもう二十年以上も前のことだ。
当時――卒業したばかりのころは四年間はずいぶんと長かったように感じていたけれど、今にしてみれば、五十年近く生きてしまうと、一瞬だったような気がする。ほとんど思い出すこともない。
それがふと、その街のことを思い出したのは知り合いの名前を思い出したからだった。あのころ、友だちとよく行っていたスナックはどうなっているのだろうか……。Googleのストリートビューでそこをたずねてみた。ところがマップで見ても当時、住んでいた場所もわからない。
もちろんストリートビューに映しだされる光景は当時とは全然、ちがう。
記憶とも一致しない。
ストリートビュー上でうろうろとさまよい、行ったり来たりしているうちにかつて自分が住んでいたアパートの場所を見つけた。たしか、このあたり――先に見つけていた友人が住んでいたあたりはすっかりかわってしまい、アパート自体が消えてしまっていたのだが、ぼくが一年だけ住んでいたアパートはまだ、存在していた。当時ですら築二十年という古いアパートだったのだが。
それから二十年以上、たっているにもかかわらず、同じ古いたたずまいをストリートビューに見せていた。
驚き、唖然とし、ほんのすこしだけおぞましい気がした。