2010年8月28日土曜日

今敏、死す

パプリカ [DVD]
 今敏監督の訃報を聞いた瞬間、ショックのあまり、頭がぐらぐらした――なんてことだ。今、一番、作品を心待ちにしていた作家だというのに。「パプリカ」と「東京ゴッドファーザーズ」はまちがいなく、ぼくのベストテン上位にランクされる。その作家の作品があと一作しか新作がでないというのか。
 理不尽だとも思う。
 今敏監督のような豊かな才能の持ち主がなくなってしまい、何も生み出せない自分のような人間がのうのうと生きているというのに。まぁ、これは自分をちょっと高く持ち上げすぎだが。本来、比べることすら意味がない。
 今敏という人がいるということはずいぶん以前から意識していた。ただし、それは今野敏というミステリ作家がいるので、よくその人と勘違いしていたからだが――あるとき、今敏監督のホームペーズを見つけ、そこの上げられていたたしか、「パーフェクト・ブルー」の制作秘話があまりにもおもしろく、興味をそそられ、「パーフェクト・ブルー」を見た。つづいて「千年女優」――両方とも非常におもしろかったが、ただどこか――ラストが好みではなかった。不満だった。
 そして、「パプリカ」――。
 この超傑作をどういったらいいか、わからない。あまりの凄さに喚き散らしながら街中を走り回りたかったほどだ。見ろっ、みんなこの映画を見ろっ、と。
 「東京ゴッドファーザーズ」を見たのはそのあとである。
 このときも街中を走り回りたくなった――こりゃ、今敏作品を追いかけるしかないでしょう、と思っていた。それなのに訃報とは。
 あまりにもおしい。
 これからいくらでも傑作を生み出すのはまちがいない監督だったのに。
 リアルな描線のせいで、実写への傾向がある、と考えられがちな今敏監督だったけれど――個人的には逆にアニメでしか表現できないことをやっていた監督だと思う――、アニメの凄さというものを教えてくれた作家だった……。「パプリカ」なんてどうやって実写でやる、というのだ。「東京ゴッドファーザーズ」など、アニメ以外ではありえない。
 ああ。
 何度でもつぶやいてしまう。
 あまりにもおしい。急逝してしまうとは。



追記
今敏監督のHPに最後の言葉あり。
読んでるうちに泣けてきた。