2010年1月9日土曜日

中島梓「転移」

転移

 「アルコール依存症にもなったし」というくだりに軽くショックをうけた。
 スティーヴン・キングも「小説作法」を読むかぎりではコカイン中毒で、アルコール依存症だったらしいし、笠井潔「スキー的思考」で少しだけ描かれていた中井英夫もアルコール依存症だったように見える。
 どんなに才能があったとしてもそれだけ小説家という職業はきびしいということだろうか。中島梓――栗本薫のアルコール依存症が小説に関するストレスのためなのか、どうかは書かれていないが。
 それにしても中島梓がかぁ、という思いがある。
 彼女がまさに彗星のごとくあらわれたときことは覚えていて当時、高校生だったぼくはまぶしいものを見るような思いで見ていたものだった……「平凡パンチ」だったか、「週刊プレイボーイ」にインタビュー記事が載ったのだ。まだ、乱歩賞をとる前で中島梓としてのインタビューだった。ヤングサイダーメッセージというタイトルのシリージのひとつだったように記憶している。その中で飛ぶように駆けるように小説を書いていて、読むに耐える長編は二本とか、いっていた。そのうちの一本が乱歩賞を獲った「ぼくらの時代」だったのではないか……。
 乱歩賞受賞以前にもすでに「奇想天外」というSF専門誌で作家論をはじめていて――ぼくはそれを毎号、何度も読み返していた。それがあるとき、「ヒロイックファンタシィノート」という評論を載せたあと、あの「グイン・サーガ」が凄い勢いで出力されはじめたのだった。
 もうあれから30年以上が経っているのか。
 2009年5月26日、中島梓永眠。合掌。