2009年9月23日水曜日

ナシーム・ニコラス・タレブ「まぐれ―投資家はなぜ、運を実力と勘違いするのか」



 サブタイトルから行動ファイナンスがらみの内容なのかと思っていたけれど――そういう部分も多いけれど――それよりはるかに深い内容であった。まったくの偶然なことに寸前に読んだ小説の「数学的にありえない」と内容がかぶっていた。それとも偶然ではなく、そういう系列に現在、ぼくが興味を抱いているだけということだろうか?
 最初の方を読んでいてすぐに思い出したのは馬券のことだった。三十代後半、馬券で喰えないか、と競馬場に通っていたころのこと。馬券で喰えるのではないか、と勘違いしていたわけだけど、その原因のひとつは馬券で喰えていると思しき人物がいたことだった。別に面識があるわけではなかったが、パドックでよく見掛けた。あの人が馬券で喰えることを証明している。それならぼくも――。
 そう考えていた。
 結局、ボロボロになったあと、ようやく気づいたのは次のようなことだった。
 関西と関東をあわせて馬券の喰おうとする人間は何万人といることだろう……そのうち、ひとりがたまたま喰えたということは充分、ありうる、と。
 当時は株式投資もまだ知らず、行動ファイナンスという言葉すら聞いたことがなかったというのに、なんと「まぐれ」と同じ考え方にたどりついていたわけだ――純粋に論理ではなく、馬券で喰えないという現実を受け入れられなくてやっかみ半分に考えた思考だったにちがいないのだが。